※すみません、先に謝っときます。エロというより下品です。最悪です。
そんな政宗でも平気な方、笑って許せる方のみどうぞ。いつも通り兼続もえらいことになってます。
直江兼続が、自他共に認める天敵・伊達政宗の許を単身訪れることなど滅多に無い。というか全く無い。
しかしその日、兼続は伊達家への道を急いでいた。
これは己の最高傑作だ!いくら不義の輩とはいえ山犬にだけは是非とも見せねば!
兼続は荷物を大事そうに抱え直すと、自らの行いに潜む義に感じ入りながら歩みを速めたのであった。
「兼続か。帰れ」
何用だ、とすら聞かず。玄関先まで出てきた政宗の開口一番がこれである。
しかし兼続がそんなことで怯むと思ったら大間違い。
「山犬!今日は貴様に義の贈り物をやろう!私の義に慄きひれ伏すが良い!」
義とは慄いたりひれ伏したりするものではない。しかし兼続は至って正気だ。
「これは私がここ数週間寝ないで作った新作ゲームだ!
その名も『オト/ナなD/S/トレ/ーニン/グ』!D/Sはダテサナと読め!」
確認の為もう一度だけ言う。兼続は至って正気だ。
「…何じゃ、それは」
少々困惑気味に政宗が問う。当然だ。
自分とそして最愛の幸村の名前が入っていれば気にもなろう。
「まあ慌てるな!不義の漂う山犬の棲家ではあるが、義の私にとっては脅威でもなんでもない!上がらせて貰うぞ!
茶をもてい!山犬、ぐずぐずするな!」
こうして兼続はまんまと政宗の家に乗り込んだのであった。
「貴様は何をしに来たのじゃ!もう帰れ!」
あの後、結局勢いに押されてしまった政宗は、兼続に茶まで淹れてしまいそれがまた悔しいのであろう、苦虫を噛み潰したような顔を隠そうともしない。
兼続は、政宗が心を尽くして不味く淹れた茶を啜ると、鞄をごそごそ漁ってゲームソフトを取り出した。
無論、ゲームは政宗も何本か持っているし、見覚えどころか見慣れたものの筈だ。しかし素直にそう思えないのは、そのソフトには兼続の筆跡で(しかも油性マジックで)大きくタイトルが付けられていたからだろう。
『オト/ナ/なD/Sト/レーニ/ング』
「何度も言うようだが、D/Sはダテサナという意味だ!」
「…だからそれはどういうこ」
「まずは貴様の不義の本体に、この私の義のソフトを突っ込むが良い!さあ!さあさあさあ!」
よく分からない展開に政宗の士気は大きく下がっている。
何だか正直逆らうのも馬鹿馬鹿しい、とソフトをセットする政宗。と。
「!!」
思わず力が抜けそうなフォントで書かれたタイトル文字。その後ろに映っているのは幸村ではないか。
しかもいつもより心なしか可愛いというか(いや、幸村は普段から充分に可愛らしいのだが)そそられるというか(勿論普段から幸村…略)、端的に言えばいやらしい姿で。
「な!兼続!これはどういうことじゃ!」
「気持ちは分かるが落ち着け、山犬!聞いて驚くな!これは幸村を触って遊ぶという、私が作った渾身のエロゲーだ!」
歯に衣着せぬ兼続の物言いに、さしもの独眼竜・政宗も一瞬真っ白になりかけた。
くどいようだが、兼続はこれでも多分正気だ。
「どどどどどどうゆうことだ!」
「うむ!まず自分の行動を決定する!コマンドは触る・舐める・入れるなどがあり…」
「誰がゲームの内容を説明しろと言うたか―――!」
政宗はとりあえず手元にあるお茶を兼続にぶっ掛けてみた。しかし兼続は黙らない。
「付属のペンを使って幸村を触ると画面下のゲージが溜まる。溜まれば溜まっただけ色々お楽しみがあるという訳だ!
勿論逆にゲージが0になったらゲームオーバーだぞ、気をつけろよ、山犬!」
「………」
「こういうものは結局経験がモノを言うからな!是非これで練習しろ!幸村の為精進あるのみ、くじけるな!山犬ぅ!」
「くじけているのは貴様の所為じゃ!それにまるで儂が下手糞のような言い方をするな!
大体昨夜だって幸村は儂の下で」
あんあん啼いておったわ、などと最悪なことを叫びかけた政宗だったが、ゲームを起動させっぱなしだったのが良くなかった。いや、良かったのか。ともかくどちらに転んでも最悪は最悪だ。
つまり、デモ画面が流れ出してしまったのだ。デモまで作るとは、兼続は本当に芸が細かい。
「…っや…まさ…ね…ど…」
政宗の(幸村のことに関してのみ)鋭敏な聴覚は、ゲーム機から流れるその声を聞き逃す筈無かった。
「どうだ!フルボイスだぞ!山犬!」
会心の笑みで兼続が叫ぶ。
「………」
「呼び方はオプションで変えられるがな!」
「………………」
「幸村の衣装もクリアするたびに増えていくぞ!」
画面に釘付けだった政宗が、ぎぎぎと兼続を振り返る。
「…幾らだ、兼続」
仮に実の父親が敵に人質に取られ、その父を涙を呑んで撃たなければならなくなったとしてもきっとこんな顔はしないと思わせるほど、彼の形相は凄かった。
「おお!幸村の為修行するのだな!うむ、よい心がけだ!その山犬の心意気に免じてこの金額ではどうだ?!」
そう言って兼続が提示した金額はどう考えても法外だった。
しかし政宗は文句一つ言わず、兼続の手に金を握らせる。
大名に、もとい、金持ちの息子に生まれて良かった…!そんな思いに囚われていた政宗は、何故兼続が幸村のあられもない姿やあんな声のデータを持っているのかという最大の疑問を省みることまではしなかったのである。
兼続を急き立て帰した政宗は、早速付属のペンを手に取った。
緊張しつつスタートを押す。と同時に流れたのは可愛らしい幸村の声、ではなく、兼続の声だった。
「山犬!貴様が幸村と上手く事を為せるよう、私も言葉で応援しよう!」
「兼続―――!これでは幸村の声が聞こえんではないか―――!」
兼続による解説のオン/オフ機能は、一旦クリアしなければ操作不可能であることを知った(兼続の残していった手書きの説明書に書いてあったのだ)政宗は、今晩は寝ないことを決意したのだった。
「何だか最近政宗どのとお会いしていない気がするのですが…」
「気にするな、幸村!山犬は幸村の為修行中なのだ!愛だな!」
「…はあ」
真実を知った幸村が物凄い剣幕で伊達家に乗り込むまであと少し。
怖いもの知らずの政宗が「やはりペンなぞより直に触る方が」だの何だの言ってしまい、幸村から全治一ヶ月にも及ぶ鉄拳制裁を受けるなんてことは最早どうでもいいことなのである。
ごめんなさい。本当にごめんなさい。正気じゃないのはわたしです。
でもおもちゃ屋に並ぶD/Sの文字にダテサナ!とときめいたのです。
何で直江がそんなの作ってるんだよとか、え?ゲームソフト?どうやって作ったの?とかそういう突っ込みは勘弁してください。
エロゲー詳しくないのでよく分からなくてごめんなさい。
…いや、謝るところはそこじゃないでしょう。分かってる、分かってるよ。
でもこんなゲームあったら買うよ、わたしゃ。
(08/05/10)