「のう、政宗?昨日一緒におった者は誰じゃ?」
恋人(+α)と過ごす嬉し楽しい週末があっという間に終わった月曜日。普段より少し遅めに登校した政宗を待っていたのは、同級生・ガラシャのこんな疑問だった。
「…一緒に?どんな奴じゃ」
昨日は概ね幸村と過ごした。だが、不本意ながら昼飯を三成や兼続ごときと摂ってしまったことも事実。
うっかりガラシャに「恋人だ」などと答え、彼女が指す人物が三成だったりでもしたらどうする。目も当てられんではないか。
「ちょっと背が高めでのう。昼過ぎくらいじゃろうか。駅前の目抜き通りを二人で歩いておったろう?」
それなら幸村だ。丁度、三成達と別れて政宗の家に向かっていたところだった筈。
自分と幸村が恋仲だとガラシャに話した、と幸村が知ったら慌てるだろうか。それとも怒るのだろうか。
幸村の反応を想像し、ほくそ笑みながら政宗が答えようとしたとき、ガラシャが再び口を開いた。
「政宗の兄かの?顔は似ておらんかったが、そんな感じであったのう」
妾にもあんな兄が欲しいのじゃーと今更どうしようもない願いを叫ぶガラシャを尻目に、政宗の機嫌は見る間に悪くなった。
「なんだ、そんなことですか」
帰宅後、部屋に二人になってから、必要以上に幸村にひっついていた政宗だが、鬱陶しい!と叱られ、どうしたのですか?と心配され。やっとの思いで口を割ったらあっさりそう言われた。
「そんなこととは何じゃ!」
あまりにといえばあまりな幸村の反応に噛み付いてみれば
「てっきり不治の病発覚とか、そういう凄く深刻なことだと思っていました故。でも政宗殿が元気で良かったです」
などと今度は少々ズレたコメントをほわわんと笑顔付きで返してくる始末。
うっかり「お主も体に気をつけろよ」と言い掛けた政宗だったが、それはさすがにおかしいと気付いたらしい。
「幸村は兄弟に間違われても不本意ではないのか?」
「政宗殿は、お嫌だったのですか?」
嫌に決まっておろう!だが幸村は幸せそうに言うのだ。
「兄弟って、家族ってことじゃないですか。何だか近くにいるって感じがします」
世の中色々な兄弟があるのだろうが、幸村がそういうと少しだけ政宗も兄弟に間違われたことがいいことだと勘違いしそうになる。
いや、別に本当はどう思われても構わないのだ。
幸村を兄と間違えられ思ったのは、やはり自分はどうあがいても年下で、そしてその通りにしか見えていないということ。
分かっている、この年齢の2、3歳の差は大きいのだ。仕方が無いことだ。それでも。
「不本意だが、儂は三成や兼続が羨ましくて仕方ない」
そう呟けば
「よくは分かりませぬが、あと10年もすれば年齢差も関係なくなりましょう」
だから今だけの特権みたいで何だか楽しくないですか?
そう言う幸村の顔を政宗はじっと見つめる。
「な、何ですか?何か付いてますか?」
急にあたふたとする幸村に、政宗はわざとそっけなく言ってやった。
「幸村、好きじゃぞ」
そうやって、何の疑問もなく10年後のことを語るお主が、な。
恥ずかしい子たちですが、幸は自分が何言ったか分かってないのでしょうね。
この頃はまだ、伊達が年下設定に忠実でしたね、わたし!
4〜5月の拍手でした。