※話と所属勢力は遠呂智ですが、キャラは再臨です…。もういいよね、適当で。
あ!劉備殿が好きな人には、すいません!

 

 

政宗は確かに料理が好きだ。というか得意だ。それだけではない。
掃除に洗濯、完璧とはいかなくても裁縫くらいまでなら、ぶっちゃけ人並みくらいの腕はある。
 
何も独眼竜と二つ名を持つ大名がそこまでやることはないのであるが、思い込んだら案外一途な彼のこと。いつか最愛の幸村を娶っても(細かいことは気にしてはいけない)決して彼に苦労はかけまいという涙ぐましい努力こそが、現在の政宗の小器用さの源である。
 
 
 
そんな訳だから、政宗が遠呂智軍にその身を寄せた時、彼がまず行ったことは掃除だった。武器や兵糧を確認するでもなく、周囲の地形を大いに探索するでもなく、戦に備え休息し鋭気を養うでもなく、大掃除。
「妖魔とは…住処がこのように汚くとも気にせぬものなのか?」これが古志城に到着した政宗の第一声で、次の瞬間には愛刀をハタキに持ち替えていきなり煤払いをはじめた独眼竜である。実はハタキを探し出すまでに、掃除用具という言葉すら知らない妖魔武将と一悶着あったのであるが、そこは割愛したい。
 
「桃太郎の話の挿絵でも鬼が島は汚いじゃろう?」
陽の当たらない洞窟の中で、蜘蛛の巣はかかりっぱなし、いつかの食事のなれの果てであろう骨(何の骨かはさておき)はそのまま放り出され、これまた汚い盃で酒のようなものを豪快に飲み干す鬼達。今思えばそれもその筈。
「誰も掃除しようとせんのじゃ。汚くなるのは当然よ」
これ見よがしに大きく息を吐いても、政宗の苦労に労いの言葉をかける者は誰も居ない。
 
 
 
だから、なのか何なのか。兎に角政宗は、日がな一日てんてこ舞いである。
妖魔なのだから、手前勝手に食事でも何でも済ませろ、儂は関係ない。そう言い切ってしまいたい政宗だが、戯れに一度飯を分けてやったら、妖魔達は次の日から実に物欲しそうな顔で此方の様子を窺うようになってしまった。人間の食べ物は美味しいと学習してしまったのである。
それでも無視していたら、風鬼と飛頭蛮が民家に忍び込んで握り飯を恵んでもらうという事件が起こった。
 
「…野生の生き物には、人間の食べ物の味を教えてはいけなかったのですわ、ねえ奉先様?」
 
その呂布こそが一番危険な野生動物じゃろうとは思ったが、口に出すには命は惜しいし、鈴を転がしたような声でそう言われてはさすがの政宗も返す言葉がなく、妖魔武将への餌やり係はなし崩し的に彼の役目となった。
それに遠呂智が便乗し、妲己が混じり、「妲己ちゃんがそうするなら、うちもや!」と政宗が作らねばならない膳の数は、あれよという間に膨れ上がっていく。
 
先日は政宗に炊事を押し付けた貂蝉その人が、何食わぬ顔で政宗の食事に舌鼓を打っているのを見てしまった。貂蝉の隣の呂布と己の命を秤にかけて、それでも一言くらい文句を言ってやろうかと近付いたら、あの極上の笑顔で「政宗様のお料理は本当に美味しゅうございますわ。今度この貂蝉にも教えてくださいませね」と先手を打たれ、何も返せなくなった。
念の為に言っておくと貂蝉の笑顔に絆されたのではない。(そりゃ彼女は綺麗だけど、政宗にとっては幸村が何よりな訳だし)彼女の言葉が終わるか終わらぬうちに「貴様!貂蝉の何だ!」と卵焼きを噴きながら無双方天戟を取り出した呂布に心底怯えたからで、ああせめて一目幸村に会いたかったと人生を投げ出しかけた政宗を救ったのも、貂蝉の一言だった。
 
「私はこのような美味しいお食事を奉先様に作って差し上げたいのです。政宗様に習っても宜しいでしょう?奉先様」
 
この一言は効いた。呂布は黙って頷くと再び卵焼きを口に含み、貂蝉は実に美しい勝利者の笑みを浮かべて此方を振り返った。
それからというもの、彼が忙しく動き回る厨に貂蝉が姿を見せたことは一度もないが、これ以上追求する根性は政宗にはない。
 
 
 
それはさておき、自分の膳を前にやっと箸を持ちかけた政宗の耳に、子供の悲鳴が響く。
 
「うわあああん!うちのエビフライ!それうちがとっといたんや―!」
 
知らんぞ儂は。それぞれの皿に全てのおかずをこれでもかってほど均等に分けた筈じゃ。
 
「返せ!うちのエビフライ返せ!吐き返さんかい!」
 
大体見るからに智恵も理性も足りない亡者火の前で、好きなものを最後までとっておく卑弥呼も悪い。そんな間抜けな奴がこの乱世生き残れると…。
 
「…うちのエビフライが…尻尾だけに…いてこましたんねん!いっくで…」
「ちょ、待て!卑弥呼!儂の、儂の分けてやるからここで無双はやめておけ!」
 
ほんまに?字の書き方から箸の持ち方まで懇切丁寧に教えてやった卑弥呼に、政宗は弱い。妲己の為に身を粉にして働く姿勢が、他人とは思えないというか。
かつては「もう箸なんか使えへんでも問題ないやんか!」と癇癪をおこされ、ついでに「幸村はんに教えるみたいに、もちっと優しゅう言いなや」と揶揄われたりもしたが、やはり放ってはおけない。そもそもここで無視できるようなら、現在の政宗はもうちょっと楽なポジションに居た筈である。
食べられたエビフライは一つだけであったのに、政宗の皿から遠慮なく三つ目を口に運んでいる卑弥呼を見ながら、まだ箸の持ち方が間違っているが今指摘すべきか後で注意すべきか悩む政宗。こうして母親(?)気分に浸っている隙に、卑弥呼のエビフライを盗んだ亡者火がそっと席を立とうとしたので、これまた叱りつける。
「ブヒャ、叱られてたまるか」
「そりゃ叱るわー!貴様への餌は充分やっておるじゃろう!」
亡者火に正座を命じて振り返ると、孔明が我関せずと食事をとっている姿が目に飛び込んできた。
 
「孔明…貴様もいい大人なのだから、止めるなり卑弥呼に一つ分けるなりしたらどうだ!」
「いえ、このような贅沢な食事、蜀では頂けませんでしたので」
 
そう言って素早く袖で自分の皿を覆う。何じゃこの意地汚さ、これが本当にあの天才軍師か?
向こうでは百々目鬼が、人間の数倍はあろうかという長さの腕を目いっぱい伸ばし、何かやっている。どうせまた碌なことではあるまい。そう思って観察していたら、百々目鬼が手から何かを放った。どうやら己の腕の長さを生かして、離れた場所からゴミ箱にゴミを投げようとしたらしい。
健闘(?)空しく、ゴミはゴミ箱の縁に当たって跳ね返された。
 
「まあ、良かろう」
 
良かないわー!そう突っ込むのも面倒でその場にへたり込んだら、卑弥呼が「美味かったで!」と皿を返してきた。
さすが儂の揚げたエビフライは尻尾だけになっても美味いわ。
おかずを全部平らげられ尻尾しかない皿を見つつ、卑弥呼にそう嫌味を言ってみたが通じる訳はなく「なー!美味いなー!」と元気に返され、不覚にも少々和んだ。ついでにもう一度卑弥呼に箸の持ち方をおさらいさせて、政宗の食事はようやく終わる。
勿論、この後には眩暈を起こすほど大量の後片付けが待っているのであるが。
 
 
 
 
 
「ちょっとお!政宗さーん、政宗さんてば!」
 
古志城にヒステリックに響く上司(多分一応上司だと思うが自信はない)の呼び声に何事ぞと雑巾片手に駆けつけてみれば、妲己が自室でおろおろと佇んでいた。棚も箪笥も鏡台も、引き出しという引き出しは全て開け放たれ、一体何処にこれだけのものが?と疑問に思うくらい散らかった部屋には足の踏み場もない。
踏み場もないから入り口でたたらを踏みながら、それでも一応尋ねるのだ。ああ、儂って何ていい人。
 
「…どうした、妲己」
「私の崩国がどっかいっちゃったの!政宗さん、探してよ」
 
何故儂が。一瞬尤もな疑問が脳裏を過ぎったが、これに満足いく回答は得られないであろう。仕様がないので同時に思ったもう一つの疑問を口にする。
 
「何故己の獲物を失くすのじゃ。少しは整頓を心がけよ!」
「だってあれ、丸っこいじゃない!どっかにごろごろ転がってっちゃったのよ!そうよ、きっとそう!」
あんな一抱えもある球を探すのに、こんな小さな引き出しまで引っ繰り返したのか。掃除しながら探せ、掃除しながら。そう言えば妲己はきょとんとした顔でこう返す。
 
「え?まだ探してないけど」
 
ざっと見渡しても無かったから困って政宗さん呼んだだけなんだけど。
そうか、つまりあれか。この部屋の惨状は、一生懸命探し物をしたその結果ではなく、普段の状態なわけじゃな?これ以上仕事を増やすまい、毎日そう決意を固めているというのに、やはり政宗の常識人スイッチが入る。
 
「…もういいから出てけー!貴様が居ては片付くものも片付かぬわ!」
「掃除してくれるんだ?やった!」
 
手を打つ妲己に、なるべく冷たい声で言ってやる。「嫁の貰い手がなくなるぞ」そう言った瞬間、無邪気に笑う卑弥呼の顔が浮かんで切なくなった。
政宗の台詞にさして堪えた風もなく「いいもん、遠呂智様に貰ってもらうから」と捨て台詞を残して扉を閉めた妲己。この場には居らぬ卑弥呼に心の中で謝りながら、それでも幸村に会いたいと思った。卑弥呼には後でこっそりプリンでも作ってやろう。まずはこの惨状を何とかしてから、な。
 
 
 
結論から言うと、妲己の崩国は椅子の下からあっさり見つかった。明らかに、腰掛けていた時に足で弄って遊んでいました、という失くし方である。だがそんなことはどうでもいい。
妲己に見つかった旨を報告し、同時に彼女の部屋から大量に生産された汚れ物を運びながら牢(とは言っても自由に外には出れぬというだけで、中の人はごろごろしたり楽しそうに話したり、案外平和そうだ)の前を通りかかったら、すごい叫び声が聞こえてきた。
 
「おお!雲長に翼徳!そして我が民よ!この私が不甲斐無いばかりに苦労をかけて…許してくれ!だが遠呂智は私が必ず倒す!それまで民よ!どうか耐えてくれ、民よ!」
「孫策…ああ!孫策!私が理不尽にもこんな汚らしい牢に捕まっていることできっと君は胸を痛めているに違いない…」
 
汚らしいとは失礼な。確かにはじめは見るに耐えない牢だったので、政宗が懸命に掃除して、今では食事まで作ってやっているのだ。
ちょびっとそう思ったが、やはり今更驚きはしない。人質の中でも特にあの二人は、時折思い出したようにああして叫ぶ。疳の虫を何匹飼っておるのだ。
そういえば先日は、太腿に肉がついて暫く馬に乗っていないことを痛感した、真に情けない、と言った内容を叫んでいたので、とっ捕まっていることは彼らにしてみれば二の次なのかもしれない。
 
が、政宗が不快なのは他でもない、彼らのわざとらしい台詞回しとかテンションとかが、あの天敵を髣髴とさせるところだ。この世界に来てからは姿を目にするどころか噂も聞かないというのに、彼らを見るとついつい上杉の自称義男を思い出してしまうから困ったものだ。
だから足早に通り過ぎる。
 
その先の洗い場で、桶に山と積まれた洗濯物を見たら、何だか泣きたい気持ちになった。
既に今朝、あんなにたっぷり洗濯を終えたところだったのに。そうだ、兵糧とか金の計算もしなければいけないし、妲己の部屋よりも手強い司馬懿の部屋の掃除もしたい。掃除をすれば不機嫌になるのに、放っておいたらやっぱり怒る。孔明を見れば噛み付くし、あんなに顔色が悪いのだからどうせなら二、三日寝込んでくれれば静かになって良いのじゃが。それとも大陸の軍師には駄目人間が多いのか?
 
 
 
 
 
「少々お痩せになりました?」
月明かりの下での久しぶりの逢瀬で、愛しい恋人にさも心配げに囁かれた政宗が、ほんの少しばかり遠呂智軍での愚痴を吐いたとて、一体誰が責められよう。まるでそれが、生活に疲れた主婦の如き内容だったとしても。
 
「洗濯を終えたらすぐ昼飯、掃除していればいつしか夕飯の時刻で、それが終わったらやっと陣ぶれに出陣じゃ」
 
幸村を抱き寄せ呟くようにそう言って目を閉じる政宗の背を、幸村はそっとなぞる。
共に居られないのは分かっているし、こうして会えばその後が一層辛いのは百も承知。それでもやはり会いたいのだ。政宗が滅多に吐かぬ弱音を間近で聞けることは嬉しいが、この場で甘えさせてあげることしか出来ないことがもどかしくもある。
こんなことを言えば政宗だって困るだろう、だが黙っていることも出来なかった。
 
「私に、何かして差し上げられることはございますか?」
 
真摯な眸で此方を見遣る幸村に、政宗が優しげな笑みを返す。
大丈夫じゃ、偶さかとはいえお主とこうして会うことが出来ればそれで充分、今暫くはこうして抱かれていてはくれぬか。
そう格好良く言うつもりだったのだが。遠呂智軍での生活は、政宗の思う以上に彼自身を苛んでいたらしい。発せられかけた言葉はもう止まらなかった。
 
「幸村。儂を攫って逃げてくれぬか?」
 
儂ってば何ということを、つかこれ逆じゃろ、これじゃあ儂、格好悪いばかりで良いとこなし、どころか受になってしまう。ああ違うのじゃ幸村、そんなあからさまに唖然とした顔をせんでくれ、口が滑ったというか、まあ本当にあの軍辞めたいな疲れたなというのは本当じゃが。いくら悔やんでも一度出た言葉は取り消せぬ。
居心地の悪い沈黙の後、ようやく顔を上げた政宗が見たものは幸村の笑顔。それも吃驚するほど良い笑顔だった。
 
「そういうことでしたらお任せくださいませ!言葉を尽くして政宗どののご苦労を慰めて差し上げるのは苦手ですが、それならむしろ得意でございます!」
 
攫うのであれば馬はあえて二人乗りですよね?追っ手も物見も全然居りませぬ故、雰囲気を出す為にわざと一旦古志城に戻りましょうか?それとも忍に命じてそれとなく政宗どの脱走の噂を広めます?その間我々はここで時間を潰して――嬉々として己のハンデを増やそうとする幸村を思わず政宗は抱き締めた。
これはこれで少しばかり雰囲気読めない阿呆の子じゃが、遠呂智なんて糞くらえ、やはり儂はこっちの方が良い、癒されるわ。
 
 
 
 
 
こうして街亭で戦う前に、幸村が身を寄せる蜀の将となった政宗。
多少貧乏かもしれないが、自分の部屋だって持ち物だってきちんと自分で整頓するし、食べ物を取り合って刃傷沙汰になることもない。ああ、ここは極楽か。
幸村に寄り掛かって隻眼を細めれば、幸村も控えめに、だが確かに小さく笑って応えてくれる。
 
「我が主・劉備殿の行方を耳にされたことはないだろうか?」
 
蜀軍を束ねる趙雲にそう尋ねられたのは、政宗がこの軍にすっかり馴染んでからのことで、趙雲の言葉に政宗は首を捻った。
「遠呂智軍襲撃以来行方知れずの劉備殿を探しているのだ。どんな小さなことでも良い。噂を耳にしたことがあれば教えて欲しい」
そう言って頭を下げる、何処か幸村に似た実直さに報いようと政宗は記憶を手繰り寄せたが、劉備の名を耳にしたことなど一度もない。古志城に人質として囚われていた者は多く居たが、その殆どが政宗にとっては名も知らぬ者であった。
 
「我々も手を尽くし探したが、全く情報がない。後は遠呂智軍だけであるが…国を愛し、何より民を愛する劉備殿が、まさか遠呂智に下ったとは思えぬのだ」
 
そう言って趙雲は政宗のこれまでの境遇を思い出したのか、「これは失礼」と小さく謝罪した。それに軽く手を振って応えながらも、政宗の胸中は不吉な予感でいっぱいになる。
民を愛する、じゃと。まるで兼続ではないか。為政者であれば当然のその行いを、尤もらしく大声で語り、かつ何の疑問も持たぬ男。確かにこの世界に来てから劉備の名は聞かなかった。だが政宗とてそれが誰であるかということは、書物を読んで知っている。股肱と頼む義兄弟の名も、字名も。
 
「関羽殿も張飛殿も同様に行方が分からず…」
 
――ああ、やっぱりアレか。
仮にも蜀漢の皇帝をアレ呼ばわりは随分かもしれぬが、気分は正にそうだった。何故あの時気付かなかったのか。
牢の中で毎日毎日元気良く仁を語っていたあのおっさんは、劉玄徳だったのだ。思わずその場にしゃがみ込む政宗。
 
「政宗どの?如何されました?」
 
お気分でも悪いのですか?甲斐甲斐しく世話を焼こうとする幸村を手で制すると、政宗は弱々しい口調で趙雲に告げる。
劉備殿は古志城じゃ。人質として牢に監禁されている御仁がそうだと思う。面識無い故確証は持てぬが、恐らくは。
 
「牢に監禁だと!劉備殿、おいたわしや…趙子龍、今すぐお傍に参ります!」
 
それまでご無事で!とか何とか叫ぶ趙雲の背中に、聞こえぬだろうが言ってやる。うん、御無事どころか、そ奴はすげえ元気じゃから。声量ではやや劣りはするものの、民だの仁だの、演説のうざさはぶっちゃけ兼続と良い勝負だから。
 
 
 
一気に士気がマックスになった蜀軍は、我先にと古志城に押し寄せる。
劉備殿を救うのは私です、いいや俺だ、我救ウ!何だこれ、市だかいう女の旦那&親衛隊よりテンション高いぞ、この軍。
 
戦場の各地でちぎっては投げちぎっては投げられる妖魔武将の皆様。こんなに強いんなら、はじめから頑張れよ!呆気にとられいっそ色々投げ出したくて仕様がない政宗を支えているのは、今や隣に居る幸村の存在だけで、その幸村がにっこり笑って誇らしげに言った。
 
「皆さん嬉しそうで何よりです。政宗どののお手柄ですね」
 
そうだ、もしもこれで劉備が居なかったら、儂こいつらにタコられるんじゃなかろうか。
兼続に酷似したテンションのおっさんが、遠呂智の居ない世界でも高名だったあの劉備じゃなかったら良かったのに、という政宗の儚い願いは、政宗自身によってあっさり塗り替えられた。
 
どうか劉備が無事に見つかりますように、つか、あのおっさんでありますように!もしも見つからなくても、儂の所為にはされませんように!
 
 
 
後はもう御存知の通り、劉備の為にと敵本拠地に突入した蜀軍は、瞬く間に妲己を撃破すると、遠呂智相手に一対多数の撃ち合いを挑み、見事、劉備を救出するのである。
 
例えば、劉備に駆け寄る武将達の後ろで、政宗がその恥ずかしい演出にさぶいぼを立てていたこととか、結構本気で今後のことを憂いていたことだとか、遠呂智軍にいても蜀軍にいても苦労の度合いって変わらないんじゃと思ってしまったことだとか。いつもいつも儂ばかりが貧乏籤を引いておる気がするのだが。
そう首を捻る政宗に、あなたが比較的常識人だからですよ、と教えてあげるような心優しい人は、少なくとも政宗の周りには誰一人居ないのだった。

 

 

 

太郎さんの描かれた政宗と卑弥呼に萌えまくって、「幼女!」「政宗と卑弥呼はいいですよね!」と叫び、
いつか書いてもいいですか?と図々しくも尋ねたら快諾くださったのですが…まさか劉備の話になろうとは。
すいません、私の中では劉備は「ぱっと見いい人っぽいけど三国一曲者なオヤジ」です。
急に弱々しいこといったりする癖に、思い出したように「孫呉め!」とかカッとなるおっさんです。大好きです。

しかし太郎さんが仰っていた「卑弥呼に箸を教える政宗」がかけて大変に満足です。
すいません、私だけですね。「ハートフル遠呂智軍いいですよね」とか言ってたのに、本当ごめんなさい。
ちっともハートフルじゃないんだぜ!すいません、今後ゆっくり謝らせてください。
つか、リベンジ、します…いつか…。
(09/01/23)